ホジャ・ナスレッディン

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第7話 のびーるアイスを本場で食す

9月22日(火)
いよいよ今日はアダナを出る。アダナでも特に村にいたのは2日間くらいだったけど、こうしておりてきてみるとやっぱり空気がきれいだったなーとあらためて思う。空気が違うと食べ物も違う。実際新鮮だったというのもあるが、食べ物も生きている感じだった。町は便利だし、慣れているから居心地はいいけど、なんだかくすんで感じる。村で食べた食事はどれも本当にキラキラして美味しかった。
  
 アダナでは最後の食事、とおもいつつ朝食をいただく。大勢なのでどこで食べるんだろうと思っていたら、キッチンの床に布を敷いて用意がされていた。朝食は、チャパティ風のエキメキ、フランスパン風のエキメキ、サラミ入りのスクランブルエッグはサラミも卵も濃厚ですごい!止まらない。巣ごとのはちみつ、やぎのチーズ、カッテージチーズ、チャイ。藍子がお腹痛いと言いだすので梅干を食べる。お母さんが藍子にとミントティー(生の葉で淹れてくれた)を作ってくれるが、藍子が飲まなかったのでいただくと、これまたフレッシュで香り高くて美味しいのだ。

 朝食のあと、少し洗濯をしてもらって、荷物の整理をする。この家は屋上が気持ちよかったからと上にあがる。

はためく洗濯物と一緒にくつろぐ。ここでトルココーヒーもいただく。至福のひととき。

いい天気、強い日差し。

屋上へとつながる階段。この家もとてもかわいくて快適な家だった。

 いよいよアダナを発つ。マラシュまでお兄さんが車で送ってくれる。お世話になったお母さん、ルキエ、ベイザーとお別れの挨拶をして、車にのりこんだ。高速道路をとばしていく。透明度の高い空気の中、景色の色がすごくきれい。道は低い山が遠く近くをずっと連なる中を走っていく。山は地肌の茶色をところどころに見せて、低い木や草が生えているその、茶色と緑の濃淡、形の面白さが見ていて飽きない。

写真にしちゃうとなんの変哲もない感じなんだけど、車窓からみるひとつひとつの景色は、一瞬ごとに変わっていくアートだった。あの真っ赤なザクロもそうだったが、自然からの贈り物は本当に美しい。
 途中でパーキングエリアに入る。パーキングには必ず礼拝のできるスペースがあり、アリさんたちはお昼の礼拝。藍子は隣の小さな公園でひさびさにブランコ。売店でバナナとももとみかんを買って食べる。ももは黄桃、ジューシーでおいしい。みかんはすっぱくてやっぱりおいしい。果物のおいしさは段違いだ。

 3時間くらいとばして、遠くからマラシュが見えてきた。前方に高い山の中腹がびっしりと建物に覆われた街になっているという景色が見えてくる。真ん中でひときわ大きくモスクと尖塔がそびえている。車はどんどん近付いていき、街に入ると急な坂の多い街、山に斜面に造られた街だから当然なのだが、坂を車でどんどん登って登って、眺めの素晴らしい公園のようなところでやっと車をおりる。アリさんがやけに急いでいると思ったら、そこで友人と待ち合わせをしていたらしい。全員で公園の中のカフェに入り、外のテーブルにつく。ここがトルコアイスの有名店らしい。名古屋ではなぜかのび~るアイスと呼ばれてちょっとキワモノ風なイメージもあるのだが、本場ではれっきとした高級デザートなのだ。

カットしたものがお皿にのせられて、上にピスタチオがかかっている。これをフォークとナイフでいただく。卵は入っていないそうで、そのためか色が真っ白。さっぱりしているのにすごくコクがあってなめらか。びっくりするくらい美味しい!! 上質な乳製品の冷たいかたまり、とでもいう感じ。トルコは原料が美味しいからか、乳製品はどれもおいしい。ナイフとフォークで食べるのでのび~るかどうかというところはあまり関係ないようだ。

 さてそのお店もあわてて出ると、次の約束時間もとっくに過ぎているということで次の目的地へ急ぐ。車で向かったのは町はずれのニュータウンといったあたり。まだ開発中の区画もあちこちにあるようなあたりで、高級そうな高層マンションが立ち並んでいる。アダナとのギャップが大きい。ここに、名古屋在住の友人Eさんの実家があり、ご家族を訪問にきたのだ。ホテルのようなりっぱなエントランスを通ってエレベーターで部屋へ。中に入るとこれまたホテルのようなすごいお宅だ! 男性はダイニングルームへ、わたしと藍子はリビングルームに通される。ちらりとみえたダイニングルームは上品に飾られた部屋にすでに食卓が用意してあり、高級レストランのよう。リビングルームも広々としていて立派な家具が置いてあり、ちょっと場違いな気分になる。Eさんのおかあさんと妹さんがジュースとお菓子をすすめてくださる。妹さんが英語ができるので、わたしとどうにかこうにか簡単な会話ができた。もう午後3時というのに朝から果物とアイスクリームというへんな食事だったので、(遅れたせいなのだが)お腹すいたなあと思っていると、やっと「キッチンへどうぞ」とご飯にありつけるらしい。午後の日差しが入るこぎれいなキッチンでこれまた豪華な昼食をいただく。

 まずはレンズ豆のスープ。そしてトマトときゅうりのサラダ、米と肉をぶどうの葉でまいた料理、チーズのパイのような料理(ブレキ)、じゃがいも・にんじん・グリンピースと肉のホイル焼き、もっちり炊けたごはん、エキメキ。見た目も美しく、上品な料理ばかりだった。ホイル焼きはシンプルな味付けで、ごはんともよく合った。ブレキは中がもっちりしていてリッチな味だった。やはり量が多くて食べきれず、苦しかったが、かたこととはいえ英語で会話しながら食べられるのは楽しい。食後はメロンとすいかとぶどう。
男性部屋の談笑はいつまでも続く感じで、まったく展開がわからないままなのだが、藍子が公園で遊びたいというので、妹さんと3人で近くの公園にでかける。

ベランダからの眺め。区画整備されつつ、高層マンションがたちならぶ。


公園は結構大きくて作りこんだ公園だった。手入れされた植え込み、広いテラス席のあるカフェがあり、人口の小川が流れて、遊具のある広場が2つ3つある。すみの方に気になるかたちのものがあったので記念撮影。どうやらカッパドキアのにせものらしい。7時すぎ頃暗くなり始め、三日月がでてきた。たっぷり公園で遊んでまた家に戻る。男達は出かけているらしい。ふたたびリビングルームでテレビをみたり、うたたねしたり、あやとりをしたり。


10時すぎになってようやく食事をしますか?と聞かれ、(昼が遅かったからあいだをあけてくれたらしい)しかしこの時間ではあまり食べる気にもならなかったが、軽くいただく。男達が戻ってきてやっと、このあと夜行バスに乗るのだということがわかった。仮眠をとり、深夜2時過ぎのバスでカイセリに向かう。眠くて寒かったが、マラシュの夜景はきれいだった。